先生の本って……
普通は、言うのを避けるようなこと、
縁起が悪いので触れないでいたいネガティブなこと、
たとえば「退会」「死」なども書いていますね。
『60歳からピアノをはじめなさい』には、
「上手なピアノの辞め方」を書いているし、
『ピアノで指たいそう』の後書きでは、
生徒さんの「死」を話題にしている。
……この言葉は、『月刊ピアノ』のインタビュアーから言われたことです。
なるほど、言われてみれば、確かにそう。
でも、シニア世代のピアノについて語るとき、
それから、目を背けるわけにはいきません。
昔、ベストセラーで『生き方上手』(日野原重明)という本がありましたが、
読むと、「いかに死ぬか?」が書かれていて、
これ、『死に方上手』というタイトルの方が合っていると思いました。
「いかに死ぬか?」は、「いかに生きたか?」と深く関連しているのです。
ピアノレッスンも、
「いかに辞めるか?」は、「いかに学んだか?」と密接な関係が。
ピアノを一生懸命に学び、存分に楽しんだ人こそ、
「いい辞め方」が出来る気がするのです。
生の有限性……これは誰でも同じ。
どんな善人だろうと悪人だろうと、人間なら避けられないこと。
なら、その「毎日の質」を上質なものにしたいものです。
あと50年生きられる人にとっての1日と、
あと5年しか生きられない人にとっての1日と、
あと5日しか生きられない人にとっての1日では、
その「1日の重み」が、全然ちがうはずです。
「シニアのピアノ」を考えるとき、どうしてもそこに行き着くのです。
これは『60歳からピアノをはじめなさい』インタビュー掲載の昨年号
今回のインタビューは『月刊ピアノ5月号』。