昨日、ショパンコンクールのファイナル結果が発表されるとの朝6時頃にネットを見るも、やっと情報を得られたのは9時過ぎ。
日本人2人が入賞(2位と4位)。ああ……
色々な想いが頭をめぐります。
・日本人のピアノ水準は高い……という想い。
・入賞のお二人は、海外の音楽院で学んでいるとのこと……やはり本場に行かないと難しいのかなぁという思い。
そして、「久野久さん」のエピソードが頭に浮かんできました。
大正時代、久野さんは、髪が乱れかんざしが吹っ飛ぶほど、体を震わせ動かして弾き、さらにはピアノを「ぶっ叩く」ように演奏する。
指先が破れ、血がほとばしり出る(きっと、爪先を丸めて指を高く上げ弾くハイフィンガー奏法だったのでしょう)。
彼女の演奏が、当時の日本では絶賛され、「ベートーベンの大家」と褒めそやかされる。
そんな名声や人気に、本人も、世界制覇を夢見る。
ついに「欧州遠征」に出る。大勢から盛大に見送られ……。
しかし、本場に行くと……
一流の演奏と、自分の演奏とのあまりの違いにショック!
やっと有名教授にレッスンを受けるも、奏法をことごとく否定され、基本からやり直すよう言われ絶望!
コンサートなどとうてい開けず、日本にも帰るに帰れず、ホテルの4階屋上から身を投げて自殺。享年38歳。
「ショパンコンクール2021」の参加者は、
・入賞しても、「順位より、それまでのプロセスがよかった」と言い、
・予選で落ちても、「貴重な経験だった」とポジティブに捉え、悲壮感は無い。
……ああ、久野久さんと大きな違いを感じます。素晴らしいことです。
コンクールは「ピラミッドの頂点」で、その「高さ」はとても高くなりました。
でも、どんなに高くても、底辺の狭いピラミッドでは不安定。
ずっしりと裾野の「広さ」があってこそ、安定したピラミッド。
趣味で学ぶ愛好家、とりわけシニアの生徒さんは、
そのピラミッドの裾野を「広い」ものにしていると思います。
「高さ」も「広さ」もあるズッシリしたピラミッドになってこそ、
日本のピアノ教育は、本当に成熟するのでしょう。
高さを高くしているピアニスト、がんばれ!
広さを広くしているピアニスト、がんばれ!